雲の行方
宇宙戦艦ヤマトの二次小説です。
時代は「復活篇」直前。古代雪のひとり語りです。
あの時。
波の音がいつもよりはっきりと聞こえてきた。
美雪あのこは前日から部活の合宿で。
本当に久しぶりに。
二人きりで、ゆったりと過ごしたわね。
私の頬にキスを残して、あなたはテラスへと出ていった。
手すりにもたれるあなたの髪を、風が揺らしていて。
オレンジ色の陽に包み込まれた背中は、出逢った頃と少しも変わらない。
決めた、のね。
あなたの背中がそう言っているもの。
あの、第一艦橋の真ん中にあなたはいたわ。
果てしない彼方への旅も、そこに立ち塞がる敵がいても。
ただひたすらに前を見つめて、進むしかなかった。
あの頃から。
みんなの期待を背負って。
この惑星ほしの命運を背負って。
戦って。戦い続けて。
「僕たちは戦ってはいけなかった。僕たちに必要なことは、愛し合うことだった」
戦いの果てに、滅亡に追い込んでしまったあの星で、あなたはそう言ったけれど。
でも。
あなたは、戦いを止やめることはできなかった。
生きるためには、戦うしかなかったから。
そうして。
あなたは戦い続けてきた。
あの艦と共に。
あの艦が沈んでからも。
ずっと。
だから。
あなたがそう決めたのなら。
それで、いいのよ。
ねえ。
あなた?
「ユキ。散歩に行かないかい?」
振り返ったあなたの声は、穏やかだった。
私の名を呼ぶあなたの声が、今も好き。
「支度をするからちょっと待ってね?」
水平線の彼方に沈み行く陽が、最後の光を放ち。
あの空が、光った。
そして、あなたは。
軍を辞めた。