Snow Fairy

(1) (2) (3) (4) (5)

 一番初めに見たのは、白い手だった。
 
 暗闇に浮かび上がったそれは仄白く、細くて長い指の微かな動きは たおやかという表現がよく似合っていた。
 ゆっくりと近付いて来、けれど躊躇うように動きを止める。 それから、ほんの僅かに近付き、だが触れることなく戻ってゆく白い手。
 俺は子どもの頃おふくろに聞いた『雪女』を思い重ねていた。 吹雪の中やって来て、約束を破った男の命を奪ってゆくという美しい女。 雪のように冷たいその息に触れると、人は皆凍り付いてしまうのだという。
 
 あの手に触れたら、俺も命を落とすのだろうか?
 
 いいや。俺はまだ死ねない。
 俺は生きて故郷の星へ帰るのだから。
 決して、おまえになど捕まりはなしない。
 
 そう幾度も念じながら、けれど、その白い手に触れたいという誘惑は、日毎に増してゆく。
 
 躊躇うその手が、俺をいざなう。
 
 
 
 俺は、とうとうその手を掴んだ――。
 
 
石榴イラスト
 
 

←胡蝶の夢blogへ  ↓次へ

MILKCAT様リンクバナー

背景画像 by「MILKCAT」様

copy right © kotyounoyume,2009./pothos All rights reserved.

TVアニメ宇宙戦艦ヤマトの同人二次小説です。

inserted by FC2 system