:時を駆けるお題−武士の時代 no.45−小春日和
宇宙戦艦ヤマトの二次小説です。
時代は『永遠に』イカルスでの出来事ですが、オリジナルキャラクターが登場します。
苦手な方は、ご退室ください。ご興味のある方のみ、どうぞ。
宇宙戦艦ヤマトの二次小説です。
時代は『永遠に』イカルスでの出来事ですが、オリジナルキャラクターが登場します。
苦手な方は、ご退室ください。ご興味のある方のみ、どうぞ。
「何だって? 寝込んでいるのか? サーシャはどこが悪いんだ!?」
イカルス天文台の通信室にあるモニタの中、親友・古代守の顔が歪んだのを見て、真田志郎はふっと笑った。
「そう心配しなくても大丈夫だ。疲れがたまったのだろうと医療センターからは言ってきている。カリキュラムは見直したし、ウィルス検査も確認済みだ。成長過程にも特に大きな変化はない。予測の範囲内だ」
古代はそうかと言って、明らかにホッとした表情をみせた。
イスカンダルから帰還したのち、地球防衛軍の参謀を務めるこの男は、激情家のようでいて、普段は案外に冷静だ。自分をコントロールする術を知っているため、少々のことではその不敵な面構えを崩しはしない。もっとも、長い付き合いになる真田には不敵とうつる親友の表情(かお)だったが、それは、接する者を強烈に惹きつけるだけの魅力を確かに備えていた。真田とはまた違った意味でポーカーフェイスな男である。
だがそんな男も、愛娘のこととなると様相が変わる。一喜一憂といった表情を見せるのだ。それが真田には可笑しく思え、こちらもまた不敵といわれる笑顔を浮かべるのだった。
「子どもは熱を出しながら育っていくものだ。そう心配するな」
余裕で答えてみせた真田だったが、それには古代も笑い返してきた。
「ほう。未だ独り身のお前にしちゃ、随分含蓄のある言葉だな。どこから仕入れてきたのやら」
にやりと笑った親友に、普段なら顔色ひとつ変えない真田がムッとした。
そもそも、強面、と言われるポーカーフェイスがすっかり板に付いている真田をからかう人間は、そういない。宇宙戦士訓練学校に入った18の時分からの付き合いになるふたりは、互いに、数少ない気の置けない相手であった。
2度目のイスカンダル行からの帰還後、真田はイカルス天文台に台長として赴任した。未知の敵と遭遇し、あまつさえ交戦をしたヤマトをあらゆる目から隠し、万一に備えて改造・補修を行うことが主な任務であった。訓練学校の教官というのは、付帯事項でしかない。だが、それとは別にもうひとつ重要な任務を抱えていた。親友・古代守とイスカンダル女王の娘・サーシャの養育である。
現在は、ヤマトの料理長であり、訓練学校の同期生である幕之内やヤマトの機関長である山崎、また子育て経験のある柚香らの協力を得て、慣れない子育てに奮闘中であった。
「それで、次は何を送ったらいいんだ?」
軍用の、厳重なシークレット回線で仕事の打ち合わせを済ませた古代が、そう尋ねた。何気なく尋ねたつもりだろうが、少しばかり顔が綻んでいるのを隠しおおすことはできないようだ。
「そうだな。次はこいのぼりなんかどうだ。喜ぶんじゃないのか」
真田は何の遠慮もなく顔を綻ばせた。赤ん坊の頃こそ、どう接していいかわからずに戸惑ってもいたが、今の澪は可愛い盛りである。
その上、一体、今何月だと思って居るんだ? と、そう突っ込むヤツはここにはいない。それこそ、幕之内がここにいたなら、「だから貴様らは“Wパパ”なんて呼ばれるんだよ」と苦い顔をして見せたに違いないが、生憎、現在通信室にいるのは真田ひとりである。いつもなら一緒にいる澪は、少しばかり熱を出して今日は既に休んでいるのだ。
話がトントン拍子に進んだのは当然の成り行きで、地球の古代守から、澪宛てに大きな荷物が届いたのは、それから間もなくのことであった。