輝くとき
** 憧れの真田先輩 **

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#3

「よう、元気そうだな」
 惑星探査の航海のためにヤマトに乗艦した初日。食堂で声を掛けてくれたのは、幕之内先輩。
「お久しぶりです! 今度の航海はご一緒することになりました。よろしくお願いします!」
 慌てて立ち上がり、カツンと敬礼をすると、先輩も礼を返してくれた。
 幕之内先輩には、訓練生時代に実習で散々お世話になっている。卒業してからも、同じ部隊に配属になったことが幾度かあって。プライベートでまでのお付き合いはないけれど、任務ではお世話になっている方だ。
「乗艦祝いだ」
 そう言って、先輩は小さなチョコレートケーキを昼食のトレーに載せてくれた。
「ありがとうございます! うわ、美味しい!」
 本当に、幕之内先輩の料理は美味しい。これが、戦場だともっと凄いけどね。勇気百倍だもん。挫けそうな処を、何度先輩の料理に救われただろう。
 先輩は、ニコニコしながら食べる私を見てる。
 とても優しい人。だけど、本当はとってもコワイんだって、私は知ってるけど。

「ようやくだな」
 何のことだろう? 私は首を傾げた。
「随分長かったな、と思ってな。よく諦めなかったよ。真田も先輩冥利に尽きるってもんだ」
 ブフッ、と思わずケーキを噴出しそうになった。
 な、ななな、なんで、幕之内先輩が知ってるわけ!? あたし、言ったことない!!
 慌ててコップの水を流し込んだ。
 幕之内先輩は、そんな私を可笑しそうに見ていたけど。
「お前、まさか気付かれてないとでも思ってたのか? お前が真田の追っかけやってたこと」
 う、うそおおおおおおお!
 椅子を蹴って立ち上がったけど、叫ばなかったあたし、偉い!
「ま、幕之内先輩!」
 先輩は目を白黒させている私を見て、ニヤニヤとしている。
 も、もおおおおおおお! これだから、この先輩はっ!
「どうして、あの時、告らなかったんだ? 絶対、お前さんだけは来ると思っていたんだがな」
 一体、いつの話よおおお!
「初めての、訓練学校でのバレンタインさ」
 うっそ。あの頃から知ってたなんて。
 うう。やっぱ、この先輩人が悪いわ…!

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 そう、私は結局、先輩が卒業するまで、ううん、卒業してからも、告白することはなかった。

 あの時。
 私は自分に絶望していたんだ。
 あの美弥でさえ、あんなに勇気を出していたのに。
 私なんか、って言い訳しちゃった自分が恥ずかしくって。
 部屋へ戻って、ベッドの中でいっぱい泣いた。

 真田先輩が、好き。尊敬してる。
 でも、このままじゃ駄目だから。
 影から見ているだけじゃ、駄目だから。

「先輩のことは、私がお守りしますっ!」
 そう言った美弥の声が忘れられなくて。
 敵を前に、先輩の前に立ち塞がる美弥の姿が浮かんで消えなかった。

 どうしたら、いい?
 私に、何ができる?

 そう思ったら、また、泣けた。
 今、自分にできることが何にもなくて。
 先輩のために、何もしてあげられなくて。
 泣いて、泣いて、泣いて。

 泣いてちゃ、駄目だ。
 そう思った。

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